ハドソン夫人は朝食を用意した。二人分用意して、テーブルに歩み寄る人物に微笑む。

「おはようございます。ホームズさん」
「おはよう、ハドスン夫人」

どこか疲れているが、どこか明るいホームズにハドソン夫人はそっと溜息を吐いた。



ワトソンさんは?
聞かなくてもわかること。



以前はわからなくて、よくハドソン夫人は顔を赤くさせた。
今なんて。
危なかしく食器を運ぼうとするのを止めさせ、盆に戻している。
楽々とあの人へと運べるように。
かすかにハドソン夫人は笑った。
共犯者という、縁遠かった言葉が浮かぶ。
それに笑えるのは、主犯者たちがとても幸せそうだから。

「私考えましたの」
「なにを?」

「お二人の永遠を」

ホームズの眼が少し丸くなる。

「貴方は変な人で結構ですけど、ワトソンさんはそうもいきませんわ。
だから私と結婚して子供を作ればよろしいんです」
「ははっそれは」「それで終わりではないですの。
そうして私が死ねば、ワトソンさんは一生私を想っているとか子供の教育が先だとか
たくさんの理由でひとりぼっちにおなりになられるでしょ」


今度こそはっきりとホームズは眼を丸くした。
気にせず、最後にハドソン夫人はポットを乗せた。




「だから私をいつ殺してくださってもよいのですよ、ホームズさん」




ホームズは笑った。珍しく、大きな声で笑った。




「ハドソン夫人!それなら今すぐ殺したくなるよ!」



眼だけが鋭い。

抑えきれない独占欲を滲ませる、ホームズにハドソン夫人は盆を手渡した。

「例えば、の話ですわ」
「そうかい!とてもいい提案だと思ったんだが」
「そうですか。ところで昼食はどうされますか?」
「どこかで食べる予定だからいいさ」
「かしこまりました」

軽く挨拶。いつものようにハドソン夫人は部屋を出た。
羨ましいほどの愛に嫉妬しながら。










共犯者は共犯者でしかない。