暗い底は今はひどく居心地が悪い。 人に好かれる努力をしない。人に媚びれない。 どうしようもない。 塵のような感情が、いつしか降り積もっていた。 天井を見つめたまま、シャーロックは長く長く息を吐く。 ソファから動こうとしないのは、できないから。したくないから。 ふぅ。 錯覚なのに、どこもかしこも重く感じた。 誰かに甘えたい。誰かに怒られたい。 それでいいのだと、誰かに許されたい。 誰か、誰か誰かダれカ 粗大ゴミのように膨れ上がり、苦しい。 ダレカダレカダレカダレカソレデモアイシテ 「ジョン」 ぽんっと穴が開く。 「ジョンジョンジョン」 「聞こえてるよ! なに?何を取ればいいんだ?それとも他に何があるんだ?」 キッチンにいた、ジョンが近づいてくる。 と、何かに気づいたようだ。 怪訝そうな顔。今のシャーロックの状態に感づいた。 「普段は鈍いくせに」 「はいはい」 ちゅっ。額に唇が降ってくる。瞬間、また穴が開いた。 「それで?」 「噛むんだ」 舌をシャーロックが差し出せば、望むように噛まれる。 喰われる、錯覚。 内側の柔らかさに鋭い痛み、恍惚。 そのくせ、ジョンは噛んだ舌を優しく舐める。 もっと、もっと シャーロックはいつもはしない、夢想をした。 壊れたカケラの自分自身を残さず拾い、抱きしめてくれるジョンを。 馬鹿げている。だが、それが欲しい。 なぜならと、夢想は続く。 カケラは塊になり、シャーロックに― 急に強く噛まれ、夢想が消えた。 じゅっと舌の表面を吸われる。 「見るんだ」 それだけで、止めようがない涎すらも拭けない。動くジョンを凝視する。 出された舌が、シャーロックの舌先から開きっぱなしの唇までゆるゆる動いた。 微細な動きに、自然喉が動く。 痛い。痒い。疲れた。気持ち悪い。気持ちがいい。 開いて、開いて、穴だらけ。 ずるずるぞろぞろゴミが出ていく。 じゅっと顎に吸いつかれた。歯まで立てられる。濡れた唇はそうして、喉へ。 そうして・・・そうして、噛まれるのだ。 シャーロックは何もできない。 ジョンの勝手をただ受け入れる。一方的な欲に嬲られ続ける。 無抵抗ゆえの解放。 熱を孕んだ息を吐きだす。 それ以上に熱い息が、喉に。 「噛んでほしい?」 必死で頷く。 ジョンの口が開く、閉じる。かぢり、合わさる歯。 素晴らしいデモンストレーション。 どんなに痛いだろうかと思っても、それが欲しいのだからしかたがない。 頭を反らし、シャーロックは喉を差し出した。 ゆっくりと大きく開いた口が近づき、柔らかな唇が触れ、噛みつかれる。 喉仏がごりと鳴る。力強さに息が苦しくなる。まざまざと首の筋肉、気道、流れる血を感じる。 身体の痙攣を止めれない。 音にならない声でジョンを思わず呼ぶ。 ここに跡があるのだと教えるように、濡れた感触を丸く感じた。 そして、あたたかさが離れてしまった。 「どうだった?」 先程とは正反対の優しさで、ジョンが出しっぱなしの舌に口づける。戻していいと言われ、舌を咥内に戻した。何度か喉を動かし潤わせる。 噛まれた跡が疼く。 これ以上をどう与えられるのか。 どう壊してくれるのか。 「足りない」 掠れた声はきっと届いただろう。 戻