もう寝ようかとジョンは立ち上がり、自室に戻ろうとした。うずくまり何か空を見ているシャーロックに、一応声をかけて。
「先に寝るね」
珍しくシャーロックが立ち上がり寄ってきた。
「ジョン」
いつになく暗い様子に、何かあったなと察する。しかし、なぜかなんてわからない。
シャーロックは隠すのが上手だ。高慢だからこそ、隙を見せない見せたくない。
しかし最近ようやく、こうした姿を稀にジョンに見せるようになった。
それは、誰かに甘えたい、隠れた本音。
「よしよししようか?」
「別のことだ」
それに、暗い欲求の、自己満足。

耳に囁かれた今夜のオーダー。
間違えようもないのに、念のためと見せられたパソコンの映像。
より痛そうな、目的への通過点。
実際、どちらが痛いかなんて、きっとこちらに決まっている。

異常だとか思う前に、既にジョンは興奮していた。
応えは、オフコース。
めったにないこんな夜の時間を、どこかで待ち望んでいた。
報復、慈愛。あるいは、破壊衝動。どこまでも遠い彼をいっそ粉々に破壊して、自分だけのものにしたい。
欲望は、シャーロックによって誕生したのか。既にジョンに芽生えていたのか。
「シャワーを浴びてくる」
「ベッドにいる」
そして熱い一言。
「僕をめちゃくちゃにするんだ」
本当にプライドが高い。
そこはしてくれだろうと苦笑しながらも、ジョンは急ぐ足を止めようとはしなかった。