濡れている身体をそこそこに拭い、ジョンは手早く下着まで着る。
必要はすぐになくなるだろうが、ちゃんと着ておきたい。
それでも、破裂しそうな心臓が落ち着かないのだ。
知らず滲み出る汗もそこそこにベッドに行くと、シャーロックは既に全裸で俯せに寝転がっていた。
なんでもう全裸なんだの文句が今飛び出さないのは、この雰囲気の爛れのせいだ。
白い指が、棒をつまみあげなぞり、瓶を転がし振っている。
まるで子供が新しい玩具に夢中なよう。
ただ、棒は尿道に入れるもので瓶はローションだ。
否応なしに、美しい声でしたシャーロックの今夜のオーダーを思い出す。

棒を尿道に入れて前立腺を刺激するんだ。前立腺だけで果てる、だらしがない君の快楽を僕も知りたい。

医療行為ではまったく感じられない、興奮に侵食されて息もできない。
立ち尽くす、ジョンに気づいたシャーロックが身体を起こす。
壁の方にあるベッドの頭に、用意していたクッションに凭れた。
たったそれだけで、さらに興奮が増す。
認めよう。とっくに変だ。
見透かしたように、シャーロックが微笑む。
短い命令。
「おいで」
荒い息でふらふらとジョンはベッドに乗り上げ、広がった脚の間。
シャーロックの前に座り込む。
ほら、と棒と瓶が手渡される。
そうして、背中のクッションに身体を沈めたまま。ただ、ジョンを見る。
ジョンも見た。
熱を帯びた視線が絡み合う。
「それじゃあ」
手の中の棒の感触。
喉が鳴った。
急速に欲望は、鋭く、鋭く形を変えて。
ジョンは微笑んだ。
鏡を見なくてもわかる。意地の悪い顔だろう。
見下ろすシャーロックよりも、もっと。
「それじゃあ始めるよ」
俯せに寝る。まずは、緩く反応しつつあるモノをわざと乱暴に掴む。
上がる低い呻きを笑う。
「あぁごめん」
「そうっ!」
「キスは気にいったようだね」
シャーロックはもう何も言う気がないのか、無言。
見上げれば、眉間に皺。
耳を澄ませば、荒い息。
「さてどうしようかな」
見せつけるように棒を舐めれば、震えた太股。
あやすようにその太股をぺしぺし叩き、ん〜とジョンは考えるふりをした。
見上げなくてもわかる。
どれほど注視されているのか。
棒を掴み直すと、喉が鳴る音。期待に応えるべく、目の前のモノに半分突き刺した。
「ぐぅっ」
短い悲鳴。それはそうだろう。何の配慮もしていない。
ローションの瓶は転がったまま。
「気分はどうですか」
「はっ下手な医者だな」
「別の医者を呼ぼうか?」
「いや、いい」
「そうか。あぁ萎えてはいないよ。でも痛そうだ」
よちよちと言いながらジョンは舌を伸ばした。棒が刺さったままのモノを、擽るようにして舐めていく。
「なに、をし、ているんだ」
「今は何もないからね。とりあえず舐めて治してるんだ」
「それはっふぅっ」
「ほら元気になってきた」
溢れ出す唾液で濡らすように舐めていると、苦い味になってきた。じゅると啜る。独特の味に自分の身体が濡れだすのがわかる。
「ジョンっ」
切羽詰まった声。
はぁはぁ荒い息。
「なんだい」
「ぼう」
短い単語にあぁと頷く。
半分以上突き刺さった棒。
掴む。
ジョンは見上げた。
「あ」
何かに気づくシャーロック。
視線を合わせたまま、残り全て突き入れた。